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再度お酒を考察する

酒レポート

お酒の消費量は年々減少している。減少の著しいのはビールと日本酒である。平成元年、ビールは消費の71%を占めていたが平成27年には32%まで落ちている。代わりの伸びてきたのは焼酎である。5.8%だったのが10.2%と倍増している。それ以上に躍進著しいのがベルモット、アブサン、カンパリ、各種カクテルのリキュール類です。1%未満だったものが、24%までに増えている。

では絶対量の推移はどうだろうと見ていくと、成人が増えているのに酒類の総販売数量も成人1人当たりの飲酒量もかなり減っている。ピークの平成7-8年と比べると85%から80%に減少している。ちょっとビックリです。

これは嗜好の変化による減少(ビールからリキュール類)、そして70歳以上になると飲酒量が全体的に減る。(70歳以上の成人が増えつつある現状では、当然全体的な飲酒量は減る)

この2つの要因による所が多い。

が、印象としては若い人達もお酒を飲まなくなってきた。回数も量も減っている。このことも減少傾向に拍車をかけている。私達が若い頃は、大学入学時、就職した時に酒の洗礼を受けた。イヤイヤ飲んでいたお酒も慣れ親しむうちに飲めるようになるものである。

では日本人は世界的に見てお酒を飲む割合はどうでしょうか。男性は47%で世界の平均とほぼ同じです。女性は15.2%と世界の女性の半分です。(世界平均は29%)

 これは日本人が遺伝的にアルコールに余り強くない人種に属していることにも大いに関係ある。

註  1

アルコールの分解手順

アルコール摂取

アルコール脱水素酵素がアルコールをアセトアルデヒドに分解

アセトアルデビドがアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸へ

酢酸が二酸化炭素と水に分解される→体外へ

我々モンゴロイドはこのアセトアルデヒド脱水素酵素が余り多くないので、アルコールの飲めない人が多い。コーカソイド(白人)やネグロイド(黒人)はこの酵素が遺伝的に多いので酒に強いタイプである。反対にオーストロイドの仲間であるアボリジニはモンゴロイド以上にアルコールに弱い。

 

註  2

MEOSという言葉をご存じですか。

 MEOSはMICROSOMAL ETHANOL-OXYDIZING SYSTEMの略で、日本語に直すとミクロゾームエタノール酸化酵素となる、酵素の一種です。

 過度に飲酒した場合などは上記2つの脱水素酵素が処理し切ることが出来ないことがあります。しかし、ALDHの量は遺伝的に決まっており、アルコール分解する機能には限りが有る。そしてそんな時に登場するのがMEOSで、なんとアルコールを別ルートで分解してくれるのです。さらにこのMEOS、登場すればするほどその分解力が強くなっていき、、所謂“お酒に強い”状態になるんです!

  お酒が強くなると言うのは精神的なもの、気持ちの問題だと考えられていたが、訓練すれば本当に強くなれるのです。

今の日本の社会はその訓練する場所・機会が極端に減ってしまいました。ちょっと残念です。

そうなんだ。お酒の総消費量は年々減り、お酒を飲む人も少なくなっているんだ。今の日本は!とため息混じりでウェブの記事を読み、私見を交えて原稿を書いていたら、ちょっとショッキングな記事を週刊誌の中に見つけました。

 

                                                           朝ベロ昼ベロは危険

 アルコール依存症のシニアが増殖中

アルコール性肝障害だけでなく、アルコール性脳萎縮が問題になってきている。

それは、脳の海馬の機能が低下し、短期記憶が長期記憶に移行しにくくなるので起きたことをどんどん忘れてしまう。

前頭葉機能低下で、人間としての理性や社会性を保つことが出来なくなる。

アルコール性小脳萎縮による歩行障害、運動機能障害も出てくる。

 日本にはアルコール依存症で治療を受けるべき対象の人が100万人以上いるのに、治療を受けているのは僅かに4万人ぐらいだという統計もある。

こんな衝撃的な発言もありました。

「一直線に回復していく人は非常に少ない」

「殆どの人は再飲酒を3回、4回と繰り返します」

「再飲酒は回復へ向かう第一歩だと考えればよいのです」

「酒は命の水だ」と患者さん達は言います。「酒がなければ生きてこられなかった」

ならば、酒に変わる「命の水」を見つける努力が必要です。

註  3

 

お酒は人の心をちょっと開放的にしてくれる。

多くの人にお酒の美味しさを、楽しさを堪能して貰いたい。その機会を今の日本社会は潰している。MEOSがあるから、お酒は飲めるようになる。

そんなふうに考えていたが「朝ベロ・昼ベロは危険」を読んだら怖いですね。

再飲酒は回復へ向かう第一歩だと考えればよいのです。ここまで言い切る専門医の先生の心中を察し、ご苦労を思うと、頭が下がります。

                                  平成29年12月22日  脱稿

 

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