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コロナ罹患の副産物 その5(日の名残り)

 日の名残
アンソニーホプキンス
エマ・トンプソン
カズオ・イシグロの同名小説
2017年ノーベル文学賞
重くてずしりと来る映画ですね。拍手もない。こみ上げてくる感動もない。それでありながらこんな生き方もあるのだ。こんな運命のイタズラもあるのだと・・・。
ストイックに生きた男の悲哀物語り


第二次大戦後が舞台です。
手紙の朗読から始まる。・・・ケイメン婦人からスティーブンスに宛てた手紙
ダーリントン卿が亡くなり屋敷が、ホテルが売りに出された。アメリカの富豪、ルイス議員が購入した。石材になることは免れた。(このルイスはかってダーリントン卿の方針に大反対した人物である。アマチアであると・・)
自分の近況の報告をする。夫とは破局を迎えている。一人娘のキャサリンは嫁いだ。
その手紙を読んだ、スティーブンソン(ホプキンス)は、遂に決心する。心に思い描いていた夢の実現に向けて・・・。彼はホテルの執事としてかってのスタッフを再雇用しようと英国西部の旅行に出る。主人からはダイムラーの使用を許される。
ルイス議員(新しい主人)との会話から回想が始まる。
第二次世界大戦の前、ドイツが再び軍備を持ち始め、台頭し始めた時代である。ダーリントン卿はドイツびいきである。
狐刈り、沢山の猟犬・・・壮大ですね。如何にもイギリス貴族です。自分の父とミスケイメンを雇用する。結構四角四面を通し、格式とこれまでのしきたりを墨守するスティーブンソン 父に対する呼び名で、ケイメンと対峙する。・・・CHRISTIAN NAMEで呼ぶのは身分の低いものに対する呼び方であるというのが彼女の言い分である。が、彼女がおれて父親をスティーブンスン・シニアと呼び始める。気むずかしい執事である。
部屋に花を持ってきてくれるケイメンに対してもつれない。心を乱さないでくれと・・。彼女は、勝ち気ではあるが、物静かでありながら仕事にあくまでも忠実なスティーブンスに思いを寄せていた。
使用人の食堂に於ける一コマ・・・父親が語るエピソード・虎が寝そべっていた。??
屋敷で2週間後に世界の要人が集まって会議をする。その準備に取りかかる。
ダーリントン卿はドイツを繁栄させることが欧州の平和に繋がるという主義者である。
その頃ナチスも台頭していた。ドイツ擁護派とドイツ抑制派の対立・・。
紅茶を運んでいて石につまずきケガをする父親・・・。ケイメンは父親を心配する。遂に彼は父屋に、54年間食卓で仕えてきた父親に宣告する。控えてくださいと・・。それを受け入れる父親・・・。
米国からのお客様の到着・・・ルイス議員である。一日早い。
フランスからも足のまめを作ってしまいご機嫌ナナメ・・・・因幡の白ウサギ的治療をする。・・デュポン・デイブリー
そして、父親が倒れる。ケイトンに看護を頼む。・・・最期も彼女が看取る。
会議は、ドイツが強力な国家に立ち直る権利を認めることが平和に繋がるという意見が大勢を占める。ドイツ代表の婦人は涙ぐむ思いで聞く。が、ルイス議員は反論する。「それが大きなリスクです。」と反対の立場を表明する。「現実を踏まえた政策が必要なのです。」「あなた方は政治のアマチアです。プロに任せるべきです。」
ダーリントン卿は反論する。「アマチュアの精神を我々は名誉と呼びます。」「プロとは権謀術策の塊だ。」「正義と善を軽視する連中だ。」
現実に戻る
SEA VIEW HOTELでお待ちしますとの返事貰い、旅に出る。
回顧
2人のドイツ人の女中を解雇する(ユダヤ人)・・送り返され消息不明。
この解雇の話には、ケイトンが大反対する。私もやめる・・・。
得がたい人だ。この屋敷に必要な人材だと慰留する。
現実
車がガス欠になり村に立ち寄り、居酒屋で口論になる。戦後の世の中はダーリントン卿は売国奴的扱いであることを知らされる。
私自身も大きな過ちを犯しました。それを問い質すのが今回の旅なのだ。
回顧
リジー・・・新しく雇ったかわいいMAIDさん。顔を見ようとしないスティーブンソンをケイトンにからかわれる。
かわいい娘なので心もそぞろである。だからかわいい娘さんは雇わないのだ。気が散るから敬遠するのね。
「下らない話に耳を貸したくありません。」とはねつけるスティーブンソン。
本を読んでいるところをケイトンに見つかる・・・
花を摘んで部屋に運んできてくれ他その時の出来事である。彼が本を読んでイルをも見つけてみつけて・・「みせて!!」と言い寄るケイトン。
エロ本ではなくて、感傷的な恋愛小説だった。・・「一人にしてください」と答える彼!!
リジーとチャーリーが結婚する・・・辞職する。
ケイトンはトム(他の屋敷の執事)に相談する。・・・いわゆる英国のパブで会う。
彼はクリーフトンに帰る。一緒に帰ろうと誘われる。
2130分の門限までに帰ろうとするが、トムに誘われ、抱擁を交わし、接吻をする。
幾度かの密会の後、彼女はトムに求婚されたことをケイトンはスティーブンソンに報告する。彼は、如何にも事務的に処理する。嗚咽の漏れる彼女の部屋を訪れても慰めも言わない。新しいメイドの掃除の不備を指摘する始末だ。これで彼女は決心する。

3年後、ドイツ大使を招いての会議である。
ダーリントン卿+首相+外相+ドイツ大使

ガソリンを詰め、SEA SIDE HOTELに向かう・・・海に突き出たホテルだ。
そこで彼女の到着を待つ。
彼女が出掛けようとしたその時、別れた夫が現れる。キャサリンに子供が出来た。君が必要だ。キャサリンもそう言っている。
兎に角駆け付けるケイトン
私の結婚はあなたを困らせたいという気持ちだった。結婚した自分にビックリした。
雨の降りしきるバス停で彼女を送る。最後に握手をする。
雨が上手に使われていました。
どうか御達者で!!  もうお目に掛かることはないと思います
それに対して
不躾なことを申しました。
切ないね・・余りに切ないね。
男かもしれないが、・・・・素晴らしいスティーブンスンでした。

2010/11/28
2013/03/05

アンソニー・ホプキンスの名作のひとつです。
個人的には、ハンニバル・レクターに並ぶ秀逸な演技だと思います。
在りし日の英国の紳士としての作法・言葉・振舞いが随所に光ります。
何度見ても心地がいい。
「恋愛映画」とはいえない『荘厳な人間劇』と呼ぶに相応しいと個人的には思っています。
割と日本では知名度の高くない作品のようですが、
人生の長い時間の中で誰もが経験し得る、自分では気付かない
”転機””切なさ””黄昏”を見事に表現した作品です。

この映画は自粛期間中に観賞したものではありません。アンソニーホプキンスが主役を務める作品として私はこちらを好みます。こちらの方がしっくりきます。人間としての魅力に溢れている。

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