佐藤クリニックロゴマーク

コロナウイルス感染捕物控(こんな感じでした)

  コロナウイスル感染症は対岸の火事ではない

   脚下の火の粉である

振り払うだけではなくて率先して消火活動に参加すべき時

今月から始まった『診療・検査医療機関』に佐藤クリニックも立候補しました。立候補とは大袈裟です。県と厚労省に届けでただけです。でも、これからのコロナ診療は画期的な治療薬が出来るまでは、『早期発見・早期隔離』だと確信していたところだった。それ故に、積極的に参加しました。勿論、デンカ:大塚製薬のコロナウイスル抗原定性検査です。


11月6日
1・2例目の検査しました。陰性でした。緊張もありました。陰性でホット胸を撫で下ろしました。


11月10日  『正しく恐れ、凜々しく戦う』

陽性患者発生
朝、0730分ぐらいに施設のナースから電話がある。昨日診察した3人とも高熱が続いている。咳も痰もある。解熱剤を飲ませても下がりません。かなり切迫感を感じました。これはひょっとすると「コロナか?」の思いが巡りました。『分かった。1230分に合わせて連れてきて下さい。新型コロナウイルスの抗原検査をやります』と伝えました。
そう思いながらも、この八百津の中で感染が発生するなどという事態はあり得ない。偉大なる田舎である事だけが取り柄の僻地だよとの想いもある。
午前中の診療中ももう一度昨日の検査データーを見直す。 昨日の検査データーが気になっていました。3名中2人に軽度の白血球小が認められていました。3名にCRPが軽度上昇していました。急性のウイルス感染,例えばインフルエンザの時に観られるデーターによく似ている。閉鎖空間に近い特養で感染とは考えにくいが、コロナ感染症の可能性あり。「正しく恐れて 凜々しく戦う」と決めた。
 午前の診療が終わって1230分過ぎ、検査は駐車場で待機中の車の中です。講習会で習った様にまず私が、感染防御服で身を守る。患者さんの鼻腔拭い液を採取する。検査を始めて1分、看護婦さんが叫びました。『先生!!プラスです!!』答えて曰く「見間違いだろう』『キットの説明書を読み直して・・』
しかし目を凝らして眺めるに結果は明白でした。揺るぎません。
2例目はチョット真剣に検体採取をしました。
『ポタ』『ポタ』『ポタ』 3滴滴下して眺めているとすぐさまプラスにラインが入りました。
大慌てで3例目を採取しました。
採取しながら、これからどうすべきがベストを考え始めていました。
結果に間違いはありません。


保健所に届ける前にもう一度大きく深呼吸して、キットの説明書を見直しました。可茂保健所に届ける時は声が興奮しました。『武者震い』ですかね。自分の予期したことが眼の前で起こっている事への興奮があり、これから起こってくることに対する漠然とした不安もありました。。保健所の担当者にこの3名を入院させる病院を探して欲しい。施設の検査をなるべく早く幅広く行いましょう。陽性者を隔離して欲しいと必死の思いで訴えました。保健所からは3名のPCR検査(私のやったのは抗原定性検査)を早急にやりたいのでもう一度採取して下さいと依頼されました。15分ほどして基幹病院の担当医から電話『3名は当院に入院させます。』まず、抗原検査の結果判読のことも尋ねられましたので、コントロールラインと陽性ラインが3人ともクッキリと出ている。疑似患者では無いことを力説しました。まず、第1段階クリアー。 ふたたび、保健所から電話あり。「午後3時から入所者と職員全員のPCR検査をやりたい。所長1人では無理なので、手伝って下さい』との要請でした。配置医として1日でも早い検査は望むところですので、「ガッテン承知のすけ」と引き受けました私が入所者を順番に検査することにする。N95マスクをして、しっかりしたガウンに身を包み、フェイスシールドをして手袋を2枚重ねすると汗が噴き出てきます。

1人ずつ手袋を脱ぎ、新しいのをはめるのに手間取りました。入所者の方は身の回りに何が起こっているのか理解が十分出来ていない状態で,見た事のない格好をした男がやってきた。そして無理矢理鼻の穴に『スワブ』を突っ込まれるのだからたまったものではありません。『何をするの!!』と大声で怒鳴られました。拒否されました。ゆっくり話をして分かって貰ってから検査をしたいのだが、時間が差し迫っている。
『ご免なさい』と謝りながら走り抜けるように検査をする。
夜間診療の終わった頃、保健所長から電話で『入院された3名の方は全員陽性でした』と教えて頂きました。夜の9時半過ぎ、もう一度保健所から電話があり、「施設の職員の方全員PCR検査をしました。3名の方が陽性でした」『全員全く無症状です」
やっぱりそうだったのか!
八百津は偉大なる田舎でも職員は可児から、美濃加茂から、犬山から通勤しているのだ。
11月11日  水曜日
入所者からもう1名陽性者が判明する。
北海道 特別養護老人ホームで発生したクラスターは規模がどんどん拡がっているとNHKが伝えている。今月上旬には埼玉で同様のクラスターが発生している。

ライオンズクラブの例会での発言
まだ、皆さんのお耳に届いていないかも知れませんが、八百津町の『特別養護老人ホーム」で新型コロナウイルス患者さんが発生しました。佐藤クリニックで診察し検査をしました。今月から、私共開業医でも、医療保険でコロナの抗原定性検査が出来るようになりました。国の医療制度の下で「禄を食む」者として可能な限りでお手伝いをしたいと手を挙げたところでした。今のところ入所者4名、職員3名の感染者で鎮まっています。クラスターと認定されましたが、私は、『八百津大クラスター』の発生を防いだと自負しています。
コロナウイルス感染は拡大の一途を辿っています。その現状を『怖いね』『イヤだね』『いい加減にして欲しい』と嘆くだけでは火の手は拡がるばかりです。
少なくとも、私たち医療従者は『正しく恐れ』 『凜々しく戦う』姿勢が必要なかと思っています。
10日には北海道の特養で56名の、3日には埼玉の特養で30名のクラスターが発生しています。八百津町もその運命を辿るところでした。その直前で防ぐことが出来ました。開業医としての最低限の勤めを果たしました。保健所、大病院だけでは対応しきれません。毛細血管部分の仕事は開業医の責任分担だと思っています。発生初期にきちっと対応,早期発見と早期隔離が出来れば拡大はかなり防げる。その任務は開業医に有ると思います。
ここまでは私の自慢話です。
嵐はこれからです。佐藤クリニックを受診する患者さんは激減すると予想しています。当然です。血圧の薬を貰うのに感染確率の高いクリニックを選ぶ必要は無いからです。風邪を診て貰うのにお土産(コロナ感染)がついてきそうな医療機関を選ぶ必要はないです。覚悟しています。覚悟していますが、今日ここにご出席のライオンズのメンバーの方々にはLIBERTY  INTELLIGENCE  OUR NATIONS  SAFETYの魂で佐藤クリニックをバックアップして下さい。病気になって下さいという訳では有りません。話題になると思います。その折りに『佐藤クリニックに行きにくいね』という意見が出たら『そんな事無いよ。検査態勢がしっかりしているからこそ佐藤クリニックだよ』と言って頂けると嬉しいですね。
幾重にも宜しくお願い申し上げます。

11月12日  木曜日
しかし、私が危惧していたことは起きてきました。11日(水) テレビで「八百津町の特別養護老人ホームで新型コロナウイルス患者が発生、入所者3名、職員3名、合計6名のクラスター発生と報道されると色々の創作、作り話が、中傷が飛んで来ました。跋扈し始めました。全く予期しないことでは無くて予期していたことです。覚悟はしていました。
それでも,顔で笑い飛ばしていても心の中では忸怩たるものがあります。
 私が強いて選んだ道ですから愚痴は書きません。
娘さんからの電話が多かった。
佐藤クリニックの悪い噂を聞いているが、大丈夫ですか?話を聞かせて欲しい。
母親が通院している。明日が通院日だが、私が薬だけ貰いに行きます。
ご本人からも
明日、送迎用のワゴンを利用予定ですが、孫が遊びに来る事になったので休みます。
先生がコロナで入院していると聞きましたが、開けてますか?
何日まで休みですか?
 電話で相談してくる患者さんの背景には『感染するから行かない』『暫く治療を中断する』と決めた人が沢山いる事は想像に難くない。
玄関先に当院でコロナウイスル感染者の診断をした経緯、職員も私も検査を受けた事、保健所から営業許可を貰っている事を書いた張り紙をし、患者さんも「新型コロナウイル感染者発生の重要なお知らせ」を配った。勿論、佐藤クリニックのホームページにもバナーとして掲載した。

11月13日(金) 
もう1名入所者から陽性者が出ました。合計8名です。なんとか1桁で終わって欲しい。
祈るような気持ちです。

11月27日 金曜日
この2週間新たな患者さんの発生なし。保健所と県から解除命令が届く。
一山越えましたね。しかし、1名の患者さんが亡くなりました。残念です。この感染症の本当に怖いところはあっという間に悪化して死の転帰を辿ってしまうことがある事です。私は亡くなった患者さんを月に1.2回診察をしていました。そして、いつも私が回診に訪れるのを待っていてくれました。私の顔を見ると『佐藤先生!』と笑顔で呼びかけてくれていました。ご冥福を祈りつつも口惜しい気分です。ご免なさい。私の発見がもう1日早ければ救えたかも知れないね。赦して下さい。
8名のクラスターで終わることが出来ました。上出来だと思っています。率先して検査を始めていた甲斐があったと自負しています。

発熱の患者さんがあれば、積極的にコロナウイスル抗原定性検査を行っています。
 
                                             令和2年12月4日  脱稿

 同じ加茂医師管内のディ・サービスで新たなクラスターが発生している。無症状の感染者はあちらこちらに潜んでいるのだ。『正念場の3週間』だからこそ、今こそ最前線の医療機関である私たち開業医が早期発見に努める事が大切なのである。生意気な事を言えば、医療の最前線を守っている開業医の面目躍如の場面であると思いつつ有る。存在意義はここにこそある。

 

電話・FAX

TEL.0574-43-1200
FAX.0574-43-9050