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ウイルス戦争映画『復活の日』 小松左京 原作(1982年制作) 

 復活の日
                                        小松左京  原作
                                             1964年(昭和39年)に出版

東京オリンピックの年です。あの時代に未知の殺人ウイルスの登場を予測して小説を書いていた。

  先見の明とか時代の先取りなどというおざなりの表現ではなくてこの鬼才を評する言葉が見つからない。

   驚くべき事ですね。しかも今回のコロナウイルスにそのまま当てはまる。時代錯誤の所はない。

  映画は1982年に制作されている。

1983年12月
 英国の原子力潜水艦が東京湾にやってきて、東京の全滅を確認する。日本人で地震予知学者「吉住」にもその現状を確認させる。そして小型ヘリコプターを飛ばして空気を採取させる。そこにはまだウイルスが生きていた。破棄しようとするが、ウイルス学者「ラツール」の進言を取り入れて保存する。
1982年 2月 
東ドイツ ラウプチッヒにある陸軍最近研究所からサンプルが持ち出される。ウイルスの権威であるライゼナウ教授に渡そうとするが裏切られる。そのサンプルにはMM-88と呼ばれフンンケンシュタイン的モンスターであり ポリオやインフルエンザウイルスに取り憑いて毒性と増殖率を高める。このウイルスに暴露されれば3日でこの地球上の全ての脊椎動物が死を免れないと説明する。(多分アメリカに)運搬中に飛行機が墜落し容器が破損しこの地球上で活動を始めた。人類滅亡の始まり・・・なのだね。
アメリカ軍の研究所
マイヤー博士が盗まれたMM-88を取り返さないと世界は滅亡する。このウイルスの特徴を聞く耳を持たない狂信的な軍人に説明する。彼の説明では-10℃で増殖を始める。-3度で100倍、5℃以上になると毒性が増して、信じられない増殖率を持つ。-10℃の時の10億倍だと説明する。が、彼は危険人物として精神病院にぶち込まれる。
1982年4月
カザフスタンで羊が大量に不審死する。同時に世界中で死亡者が急増する。世界中で新型ウイルスが猛威を振るい始めた。戦慄の時が来た。
イタリアのミラノで感染が始まる。(イタリア風邪と呼ばれる所以)勿論日本でも流行する
1982年5月
 南極、昭和基地にもこの情報は届く。その他の基地にも届いていた。
    吉住(草刈正雄)の回想
    恋人(則子 多岐川裕美 看護婦)との別れ。子供が出来た。が嘘だと誤魔化す。なんとか南極行きを止めたかったが・・・
    別れましょう!!  強気を通す則子  埠頭で出発を送る。永久の別れ
1982年 6月
 過労のために則子は流産をする。回復後、ウイルス患者さんの看護に献身的に働く。
 イタリア風邪(Italian Flu)が日本でも爆発的は、天文学的数字で感染が拡がっていた。街は死者が溢れていた。
ホワイトハウス 大統領執務室
関数的に増える患者、そして殆どが死亡していく。どうしようもないが大統領として何か出来ないかと模索する。ワクチンはまだできていない。打ったワクチンは気休めにしか過ぎないと暴露する保健省の長官。
これは細菌兵器かも知れない?
7月
日本に戒厳令が敷かれる。死者は3000万人
首相『どんなことにだって終わりはある』
昭和基地
 偶然入電した無線から子供の声が聞こえる。『ドビー』という名前だ。5歳だ。
誰もかも死んでしまった。寂しいから僕も死ぬといって、ピストルの音が聞こえる
ホワイトハウス
 大統領と上院議員は、極秘で保存していた火星から持ち帰ったMM-88が盗まれていたことを隠していたことを追求する。 そして、毒性の強い新しい細菌兵器を造るフェニックス作戦が、秘密裏に行われていたことが報告される。カーランド中将を詰問する。そして、精神病院からマイヤ-が救出されていた。しかし時は既に遅すぎた。大統領は『事ここに至って知らせることはより恐怖を増幅させるだけだ。』『全員のTOP-SECRET とする」
 9月
ニューヨーク  740万  ロンドン  690万  東京 1000万
モスクワ    780万 
則子
 則子の病院でも医師も、看護師も誰もが死んでしまった。友人の家を訪ねると娘だけが生きていた。
昭和基地
 竜野が奥さんと子供の写真をだかえて猛吹雪の中を出ていく。全員で探し出す。
ホワイトハウス
 「もう少し時間があったならば・・・」  マイヤー博士はそう言い残して死んだ。
人類はそう言って何度も文明を破壊してきた。と呟いて人類の歴史を嘆く。そして南極の越冬隊員は生き延びることが出来ると一筋の光を見つける。
パーマー基地
米国大統領は電話をし、コンウェイ提督に伝える。ウイルスは低温では活動が止まる。南極はウイルスに冒されない。そこで生き残れと助言、命令をする。世界各国の基地に連絡して一緒になっていき残れ。外から来たものを入れてはならぬ。戻ってきてもならぬ。合衆国は甚大な被害を受けた。犠牲者は莫大な数に上る。被害を免れた国は一つも無い。君達以外の人類は滅びる。なんとしても生き延びて欲しい。
カーランド将軍の造反 ARS作動
ソ連がこの瀕死の状態に乗じて核弾頭を積んだミサイル攻撃を仕掛けてくる可能性があるからアメリカもARSをスタンバイさせたい。命令をと申し出るが、却下される。自分で地下の司令室に赴き,スイッチをスタンバイにする。
11月 パーマー基地に向かう
隊長と吉住はその途中で雪上車を乗り上げてしまう。そこで近くにあるノルウェ基地に助けを求めて向かう。処がその基地はみんな自殺してしまった。1人の身ごもった女子が残っただけだ。

マリト(オリビア・ハッセイ 黒髪の綺麗な女優)
 パーマー会議 南極連邦委員会
コンウェイ提督
 食料・燃料の残りは2年間分有る。ウイルスが滅びるまで生き延びなければならない。
生き残ったのは855名だ。そのうち8名が女性だ。
ポーランドは残っている砕氷船を使って本国に帰る。自分の運にかけてみる。
ソ連   可能性はない。残っている資源をどう使うかだ。
チリ・アルゼンチンの争い。そこへマリトの出産のニュース
新しい生命の誕生だ  名前はグリー(ノルウェー語で日の出を意味する)
みんなで祝福しましょう
 生き延びて行くには種の保存が必要である
種の存続の危機になると性を求めるという本能が男にはある。残念なことだが・・
女性の安全を守って欲しい。女性の尊厳を守るべきだ。
新しい性秩序が必要だ。855-8名という異常な環境では,1対1の関係は求められない。無理である。
ハッキリしていることは『女性が人類の最も貴重な資源である』と言うことである。
アイするという感情を持つことをなしにして行為をしなければなりません。これは大変難しいことです。人間としての尊厳を保ちながら

ソ連の原潜を撃沈する
 寄港したいと無線が入る。ウイルス患者もいる。
委員会の全員の意見の一致で上陸は無許可 そして 最悪を避けるために撃沈を命ずる。
英国の潜水艦(ネレイド)も南極にやってきていた。この艦が魚雷を発射し撃沈させる。
ネレイドは2月から潜水を始めており、まだ発生前である事、事実感染者がいないことから上陸を許可される。

そして1年後
ウイルスは地球を占領し,人々を氷の大陸に閉じ込めていた。

ラツールはワクチン造りに没頭していた。
クリスマス・イブの夜  吉住はマリトと話し始めるも、そこにマリトとの性行為の当選カードを持った青年水兵さんが来る。彼女は青年と夜を共にする。俗に言うところの公衆便所的存在でもあったのだね。8人の女性達は・・。
アメリカ東海岸 ワシントンの大地震
リヒタースケールで8.5から9.0の大地震。地震帯ではないが、海底油田を採掘するとそこに落ち込んで断層が動くことが予想される。しかも吉住の計算では近日中に起こる確率が高いというのだ。
そうなると地震の衝撃波をソ連のミサイル攻撃と感知してARSが誤作動するだろう。止める手段がない。当然ソ連からもミサイルが飛んでくる。世界中に核弾頭が炸裂する。ソ連のミサイル配備網はこのパーマー基地も目標にしている。ここに飛んでくれば絶滅してしまう。
決死隊員2人を選ぶ
ワシントンに行き発射装置を外す作業をしよう。1人は 熟知しているカーター大佐であり(自発的に申し出る)、もう1人は吉住が立候補をするが、カーターが拒否する。殴り合って最後にはカーターが折れる。潜水艦でアメリカに向かう。又、女性と高齢男子の集団はは砕氷船で南米の最南端への移住を目指す。
「LIFE IS  WNODERFUL]を日本語でなんというのかと尋ねる。
出発前の最後の夜をマリノと過ごす。再会を約束して・・・。
潜水艦に乗る直前にラツール博士がワクチンを持ってくる。出来たぞワクチンが・・・
上陸する寸前に打ってくれ!!
地震が先に起きてしまう。
DCに上陸して目的地に急ぐ。余震で既に揺れている。
ドアーを小爆薬で爆破して進む。地下へ降りるエレベーターは止まっている。ロープを伝って降りる。途中でカーターは落下物の下敷きになり動けなくなる。そして司令室の到着する。必死にボタンを押すのだが残念ながらミサイルは発射された直後だった。
アラームが鳴り響き、画像には飛び立つICBMが映し出される。
チョット遅かった。瀕死のカーターに[lIFE IS  WNODERFUL]を日本語で『人生はいいもんだ』と教える。
そして別れる。潜水艦ネレイドに連絡する。『ラツールドクターにワクチンは効果があった』『最善は尽くしたが、遅かった。直ぐに逃げて下さい。基地にもその由伝えて下さい』
彼は北米大陸を中南米をそして南アフリカを縦断していく。半年後、服はボロボロ、髪や髭はボサボサ。木の杖を頼りに、衰弱した吉住が現れる。その姿をマリトは見つける。吉住だった。仲間のもとへ愛するマリトの元に帰ろうとする一念で生還した吉住を人々が歓呼で迎えた。
人類は2度死んだ。
 MM-88ウイルス感染で全滅し、もう一度は核弾頭による破壊と放射能汚染である。
しかし、核弾道による浄化で生き残っていた人類は死滅した。又浴びた放射能でウイルスを抑える抗体が出来た。
こうして人類は復活した。

 
                                             令和2年11月8日  脱稿

 

ウイルスの存在そのものは、知られていたが、余りに微細なため、一般の我々にはなじみのないものだった。

ウイルスが原因の病気のある事は知られていたが、その存在比率は低かった。感染症の主流は細菌学だった。

東北大学の石田名香雄教授が『センダイウイルス』を発見したのが1953(昭和28年)のことである。それから僅か11年後にウイルスが全世界を滅ぼすという発想の小説を書いた。

B型肝炎ウイルスは私が医学生の頃はAU抗原と呼ばれその本態は知られていなかった。電子顕微鏡写真でその実態を捉えた写真を見たのは卒業後である。『日本沈没』をテレビで見、映画で観た時も大ショックではあったが、所詮はSF小説と誰もが思った、小松左京の誇大妄想小説だとしか捉えていなかった。しかし阪神淡路大震災・東日本大震災を経験してみれば彼の預言通りだった。

 

 

 

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