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急性アルコール中毒に陥る

急性アルコール中毒(多分)に陥る

日本社会に於ける飲酒の立場
日本人の習慣として「昼間、ましてや仕事中にお酒を飲むこと」は基本的に禁じられている。飽くまで「仕事の後、仕事から解放された後に飲むもの」という共通認識がある。昼間はしらふで働いて、終わったら、1日の労働の報酬として、気持ちを解放するためにお酒を飲む。それがこれまでの一般的な日本社会でのお酒との付き合い方でした。というよりもアルコールを嗜好品として飲むことを認めている国の、人々の一般的な普遍的な認識です。

慣れ親しんできたビールと別れる
私は年が明けた頃からアルコール摂取量を極端に減らしました。アルコールに対する欲望が少なくなってきたので、これを機会に止めてみようと思い立ったのである。今{令和2年8月}は、殆ど呑んでいない状態だというのが妥当な表現かな。齢71歳だから酒量が落ちて当然ではある。
振り返ってみました。1月、妻の実家の新年会では頂きました。注がれるままに飲んだ。深酔いするほどの酒量ではなかったが、次の日、お酒が残っていた。チョット控えようかと思ったのが、敢えて言えば、きっかけかな。
お酒を毎晩の楽しみとして嗜む人は夕方までは、夕ご飯前までは『今晩はNON-ALCOHOL  DAY だ。断酒日だ。 休肝日だ』と決心している。が、食卓に座るとさっきの決心を翻してしまう。簡単に放棄してしまう。気がつくと、ビールで喉を潤している。後は野となれ山となれとなる。野となるのか、山となるのかはその日の気分と体調次第である。
 そんな優柔不断な自分の性格に反旗を翻した。そんな大袈裟なものではないが、その頃の心境を審らかにしてみれば、紐解いてみれば、こんなところだ。1年ほど前から再開したゴフルの練習に夕食後に行きたい。スポーツクラブアクトスへトレーニングにも行きたい。そして夜の時間帯のフリーハンドが欲しかった。アルコールを入れれば家に釘つけということである。それに抵抗してみたかった。

アルコールって習慣性あるの?
 飲まなくなったことによる禁断症状は全くなかった。飲みたいという欲望、冷蔵庫を空けてビールを取り出すという異常行動(?)は起こらなかった。離脱症状としての振戦もなかった。{こんなのを認めていたら私は本物の「アルコール依存症」だ}
端的に言って「ビール!!」という渇望は湧いてこなかった。始めはお決まりのように食卓の定位置に置かれていたチタンのコップも出てこなくなった。その頃はまだお酒を本格的に止めるなどというつもりは全くなかった。時期が来れば再び欲しいだけ飲み始める。それが当然の成り行きだと思い込んでいた。思い込みではなくて、これまで何度もお酒で失敗をしその都度禁酒を誓っても、その誓いは三日坊主どころか夕食までの命だった経歴からの正しい推論である。


このチタンのコップは最高である。真夏にガンガンに冷やしたビールを注いで放置しておいても『露ぶかない」、真冬に注いだ暖かいお茶は30分経っても暖かい。氷を入れて冷やしても外側では冷たくない、熱湯を注いでもコップを平気で握っていられる。手で懐いても熱さを感じない。アルミと違って金属臭さもない。チタンという金属の素晴らしさをまざまざと思い知る逸品である。私の持ち物の中では秀逸です。但し無粋である。芸術の香りの高いお茶碗があちらこちらに溢れている美濃地方では肩身が狭い。

その後の経過
 コロナ騒ぎで4月第2土曜日・日曜日の八百津だんじり祭が中止になった。次期本郷組当本の上石原自治会としては『だんじり祭』を肴にして酒宴をはる機会がなくなった。ますますアルコールから遠ざかった。3月第1土曜日、牡丹肉料理で仲間内3人で酒宴を開いた。沢山飲んだ。気持ちよく酔っ払ってチョット羽目を外してしこたま叱られた。第2土曜日の愛知医大泌尿器科の同門会『やざこ会』が、マリオットアソシア中国料理店で開催される。本日開催の催し物掲示板には3つだけが札が掲げられていた。殆どが自粛・中止・延期の期間です。幹事はあまたの自粛要請を断って開催してくれた。同門会は話題も共通し、気心も知れているので、何時も楽しい。しかし、沢山は飲めなかった。この頃から女房との2人だけの水曜日の夕食、土曜日・日曜日のディナーの折も往復私がベンツBを運転する事が多くなった。つまり、外食の折にもビールを飲まないことが多くなった。
現在の私
前置きが長くなったが、こんな調子で今ではアルコールを飲むのは2週間に1度、日曜日の晩、缶ビール{350ml)が定番となった。次男の陽が不定期に帰ってきた時も、「飲めよ」と彼のコップにビールを注ぐが、私は食指が動かない。乱闘事件を起こしたり、飲酒運転事故を起こしたりの社会的問題を引きおこす大酒飲みではないのだから当然かもしれないが、余りに簡単にお酒と円を断ち切れたのでチョットビックリしている。

BBQ大会
 6月の第4土曜日、友人の家のBBQパーティーに招待された。3家族、6名の会食会です。「憎っきコロナウイスル」も鎮っている。すっかりその気です。「羽目を外して飲むつもり」だったとは書かないが、上手にアルコールを利用して楽しい一時を持つ予定で望んだ。
 久しぶりのビール・ワイン・日本酒にちょっと心配になった。いつものように飲んでしまうかもしれない。ブレーキが掛からない恐れもある。そこで「転ばぬ先の杖」とばかりに「飲酒量の低減作用」を持つセリンクロ100mgをBBQ大会開始1時間前に服用した。準備万端整った。

セリンクロ効果?
 缶ビールを2本ほど美味しく飲んだ。雰囲気も最高です。屋外で会話を楽しみながら飲んだり食べたりするのはこんなに楽しいのだと実感し、満喫していた。注がれるままにワインも飲んだ。そしてビートの香りを炊き込めて造ってあるスモーキーな「ラフロイグ」スコッチウイスキーもご馳走になった。この頃から体が沈み込むような感じを意識し始めた。別に吐き気もない、眩暈もない。喋り方にも異常は感じていない。それにしてもセリンクロの効果が現れてこない。「もう充分です」「テンパイ状態です」「少しさまします」という気分になってこない。チョットおかしい。これまでに経験したことのない不思議な酩酊感が有る。平衡感覚が心許ないかな。
「家に帰る」
 みんなで楽しく喋ったり飲んだりしている最中に「僕、チョット酔っ払っちゃたので家に帰ります」「家で寝ます」と言い切ってチョットフラフラしながら家に帰る。これがセリンクロの作用かな?家に帰ると玄関先で寝転がってしまいました。動けない。兎に角動けない。ソファーまで行こうと思うが任せない。時々眼を開ける。肩が、腕が、腰が痛い。シビれている。戻ってきた時に少し嘔吐をしたが、その後は吐き気もない。眩暈もない。只、ひたすら寝てしまう。体が動かない。家に帰ってきたのは6時頃だろう。翌朝まで玄関先のフローリングで横たわっていた。吸い込まれていくような感じがあった。底のない穴に落ちていくような不安感があった。この症状が急性アルコール中毒症状なのか
どうも違うような気がする。
訳の分からない考察
結論的にはセリンクロの処理能力を超えて一時的に急速に血中のアルコール濃度が高くなった事によるアルコールとセリンクロの相乗効果みたいなものが今回の正体だろうと自分勝手に判断した。セリンクロを投与するのは当然毎日アルコールを摂取している状態の「アルコール常用者」である。肝臓の代謝もフル回転状態である。肝臓にあるアルコール脱水素酵素により酸化され,アセトアルデヒドとなる。さらに,ミトコンドリアに存在するアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により酢酸となり,TCA回路により代謝されるこのアルコール代謝回路はフル回転状態であり、処理能力は120%の状態である。
が、私は2つのアルコール脱水酵素による処理能力は遺伝的に多くない。鍛錬によって増やしてきたアルコールの処理能力{MEOSによる解毒作用}は長期間の節酒により殆どその処理能力は失われていたと考えられる。悪いことに頭脳の記憶力はアルコールの急速な大量飲用による陶酔感を覚えている。おまけにセリンクロを飲んだので抑制が掛かると思い込んでいた。
蛇足
 煙草は嗜まない。お酒は沢山飲める体質ではないが、訓練でMEOSを増やし人生を楽しむ道具としてきた。今回それをも放棄することになった。博打の才能は全くない。学生時代、医局員時代に人並みに「麻雀」は打ちましたが、面白いと思ったこと、勝ったことはあまりない。花札賭博も才能がない。賭け事ではないが、将棋・囲碁もルールは知っているが、全く上達しない。残るは「飲む・打つ・買う」の最後である。
異性問題で華やいだことがない。思いを寄せることは男としてあっても、思いを寄せられたという経験は記憶の糸を辿っても余りに細く途切れてしまう。情けない限りの人生の終末像ですね。華やぎというものを一度も感ずることなく終焉を迎えるのだ。それも人生。

急性アルコール中毒

[1]中枢神経系 中枢神経への抑制作用がある.大脳皮質の高等機能の抑制,麻痺,脳幹網様体への抑制作用が強い,大脳辺縁系への抑制は軽度である.運動失調,痙攣,反射消失,高濃度になれば,脳幹部麻痺による呼吸麻痺により死亡に至る.
[2]循環系 多尿,発汗亢進,末梢血管拡張により脱水状態となり,血圧低下をきたしやすい.心房細動などの不整脈の発生や心筋抑制もある.カテコールアミンの分泌増加により,心拍・呼吸数が増加する.
[3]腎臓系 抗利尿ホルモンの分泌が抑制されるため利尿がある.
[4]消化器 少量では胃酸分泌促進.頻回の嘔吐による吐血(Mallory-Weiss症候群)がある.
[5]痙攣 Caの尿中への排泄増加によるテタニー発作がある.また,低血糖でも誘発される.
[6]低血糖 乳酸,アミノ酸,グリセロールからの糖新生が障害されるため,肝グリコーゲン貯蔵量の少ない例や小児では低血糖を起こす.極度の低血糖により脳障害を発生する場合もある.エタノール濃度が低下する時期に痙攣をきたすことがある.
[7]急性高脂血症 脂肪酸酸化の抑制,合成の亢進,カテコールアミン増加による脂肪組織からの遊離脂肪酸の増加などにより発生する.
[8]低体温 体温調節中枢の抑制,末梢血管拡張,発汗,偶発性低体温症により低体温を示す.
[9]アシドーシス 中等度の代謝性アシドーシス(乳酸アシドーシスまたはケトアシドーシス)をきたすことがある.

MEOS
MEOSはmicrosomal ethanol-oxydizing systemの略で、日本語に直すとミクロゾームエタノール酸化酵素となる。
一般的にアルコールが摂取されると、アルコール脱水素酵素がアルコールをアセトアルデヒドに分解、アセトアルデビドがアセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸へ分解される。その酢酸が二酸化炭素と水に分解される。しかし、過度に飲酒した場合などは上記2つの脱水素酵素が処理し切ることが出来ないことがあります。しかし、ADHの量は遺伝的に決まっており、アルコール分解する機能には限りが有る。そしてそんな時に登場するのが今回ご紹介する「MEOS」でです。さらにこのMEOS、登場すればするほどその分解力が強くなっていき、急性アルコール中毒などのリスクに直面する機会が減り、所謂“お酒に強い”状態になるんです!
また、一度増えてしまったメオスは、2か月ほど酒量を減らせば、減らすことができます。
                                                           令和2年8月10日  脱稿

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