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最先端医療技術見聞録   その5

最先端医療技術見聞録   その5

尿路変向術 U字回腸新膀胱(弘前法)造設術  

 

 古家琢也先生が岐阜大学医学部泌尿器科教室主任教授に就任

 大山先生のお弟子さん(つまりは私の同門の後輩)の古家准教授が教授に就任されたのが今年(平成30円)の8月である。7月には弘前大学の同門会でお目に掛かりました。8月には弘前大学医学部岐阜県人会の席で、9月14日の第4回愛知泌尿器科金鯱セミナー (演題名 ロボット手術時代に我々は今、何が出来るのか? ロボット手術を振り返る)で、多くの興味あることをお聞きしました。45年前の泌尿器科医にとっては隔世の感がありました。そして「時は今」と直感しました。

それならば、私のホーム・ページにその話しを載せたいものだと考えました。

古家先生を、というよりU字回腸新膀胱(弘前法)造設術を世に広める一助になればと思って書き始めることとする。

「ときはいま  あめのしたしる  さつきかな」

      明智光秀が織田信長に謀反を企てた時に詠んだとされる句である。

      そんな深い意味はありません。ましてや2020年のNHKの大河ドラマ「麒麟が来る」

      を意識してはいません。

古家琢也教授 

ダヴィンチは一番術者の優劣が出る。観血的手術より差が出る。岐阜大学を「ダヴィンチ手術」の拠点病院にしたい。将来的には、開腹・開胸手術の90%はダヴィンチ手術になるだろう。 弘前膀胱という命名は「鈴木唯司前教授」の命名です。この春から保険診療が認められるようになりました。この膀胱をダヴィンチでもっと簡単に作れるようになりたいですね。そして、間質性膀胱などの良性疾患、或いは再発性・多発性で臨床的に悪性度の高い膀胱癌に積極的に作れる環境を創りたいですね。と話された。

 

 

     私も泌尿器科医の端っくれ

私はもとを辿れば泌尿器科医である。弘前大学時代、愛知医科大学時代、上飯田第一病院時代を通して積極的に泌尿器科領域の疾患の治療を行ってきた。その領域の悪性疾患の代表的なものの一つが膀胱癌である。膀胱癌の特徴は、表在性であり、多発性であり、再発性であることだった。表在性で、再発性の腫瘍に対しては経尿道的切除を繰り返した。浸潤癌に対しては膀胱全摘出術を行うのを基本としていた。最も難渋するのは、最も困難なのが膀胱全摘出術と同時に行われる尿路変向術及びその術後管理である。消化器領域における直腸癌に対する人工肛門造設術と同様に考えて頂ければ分かりやすい。但し、尿路管理は数倍煩雑でトラブルサムである。尿は24時間、365日生生成されている。生成されているというより「尿という液体」が流れている。人工肛門は、肛門括約筋がないから突然の排便・下痢等による便失禁には備えなければならないが、大抵は1日1回の排便で用が済む。後は放置状態でよい。一方尿路管理は尿失禁との戦いの日々の連続である。患者さんにとっては大きな大きな負担である。

 

尿路変向術の色々

尿管皮膚瘻造設術

                          泌尿器科のHPより借用

手術的には一番容易ではあるが、その後の管理は大変である。まず、ストーマの狭窄が来やすい。狭窄状態になると水腎症となり、腎機能低下、そして腎盂炎を起こしてくる。

尿は皮膚に垂れ流し状態なので、皮膚は尿かぶれ状態となりやすい。接触性皮膚炎なので、接触させないことが「求められるファースト」なのだが、それは不可能である。随分と苦労した。

回腸導管造設術

                         泌尿器科のHPより借用

体力のある患者さん、浸潤の低い人に造りました。腸管を導管として使うので、侵襲はあります。消化管のイレウスさえなければ尿路管理は尿管皮膚瘻に比べれば楽です。術後尿管・腸管吻合部の狭窄が来ることもあるが、頻度は少ない。皮膚のただれは必発であるが、皮膚瘻よりは少ない。

 

回腸新膀胱(弘前法)造設術

                   回腸を用いた代用膀胱による完全膀胱置換術における臨床成績

                         より借用

最初に造設術を考案されたのは小生の恩師である弘前大学医学部泌尿器科教室初代教授である舟生富寿教授である。昭和43年のことである。私が入局したのが昭和49年の頃は少しづつ評価され掛かった頃である。回腸弘前膀胱と命名されたのは2代目教授の鈴木唯司教授である。そして、3代目大山教授の時代を迎えた。「ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術とU字回腸新膀胱造設術」( RARC(ROBOT-ASSISTED RADICAL CYSTECTOMY)+ ICUD(INTRACORPORAL URINARY DIVERSION))を積極的に展開され始めた。大山先生の御努力により、今年からは医療保険でも認められた。しかしその技術を持つ泌尿器科医は限られている。

 尿路変向術は,膀胱全摘除術に続いて必ず施行しなければならない術式であり,治療戦略を立てる際には尿路変向を含め検討を行う必要がある。体腔内にて尿路変向を含めたすべての操作を完遂する尿路変向術(ICUD)は,出血量や痛み,術後管理の容易さ、患者さんの負担の軽減、消化管機能の早期回復や体液不均衡の回避など,さまざまな利点が得られる。事実、大山教授は翌日にはベットの周りを歩行し、胃管テューブの抜去と経口摂取の開始が可能であると力説されている。

舟生先生の御苦労された話は、小生のホーム・ページの「お知らせ」のなか、「我が人生の師 第一章 舟生富寿教授」にも記載した。

弘前膀胱をICUDという多くの術式をまとめた大きな概念の一つにまとめることには、チョット抵抗があるが、私の如きものの愚かな感傷に過ぎない。

サンデー毎日(2018年 10月7日号)の記事から

情熱医療 プロフェッショナルドクター 泌尿器科低侵襲治療

古家教授が更なる低侵襲手術を目指して取り組んでいるのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」だ。患者の腹部に小さな孔を6ヶ所開け、そこからロボットアームと連動した内視鏡カメラや、鉗子などの手術器具を挿入し、術者は数メートル離れたサージャンコントロールで画像を見ながら患部にアプローチする手術である。

この術式だと孔の大きさが8~12MMと小さく、出血量も少ないのが特徴である。3D画像なので細かい血管までよく見え、狭い視野での操作性にも優れている。低侵襲で患者負担も少ない上に、安全性も非常に高い。

ダヴィンチ術式は、出血量が多い膀胱全摘除術においても施行が可能である。

しかし、小腸を使って新膀胱を作製するには、高い技術を要する。古家先生はこの手術の症例経験が豊富である。今後岐阜大学においてもダヴィンチによる膀胱全摘除術及び新膀胱造設術を積極亭に行っていく予定だ。「今後主流になっていくべき術式ですから、今後はより再現性の高い術式の確立や人材の育成に力を入れていきたいと考えています」と今後の抱負と決意を語られた。

 この記事の中で教授は、このダヴィンチシステムを用いたロボット支援手術は、真に最先端のテクノロジーを駆使した手術方法であり、三次元立体画像(3D)による、拡大明視野、多関節鉗子や手ぶれ防止機構による自由度の高い繊細な操作性、さらには遠隔操作による術者への肉体的負担の軽減などにより、これまでの開腹手術や腹腔鏡手術では不可能であった操作をも可能にした。外科手術の歴史における革命的技術革新と言っても過言ではない。2012年4月、ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)が、保険収載されて以来、ロボット支援手術は爆発敵に普及が進んでいる。その中で ロボット支援根治的膀胱全摘除術+体腔内尿路変向術 が今年保険収載で認められた。

第4回愛知泌尿器科金鯱セミナーでの私の挨拶

左から住友愛知医大教授・古家岐阜大学教授・筆者・中村准教授

 

 

 

舟生教授のエピソードを紹介しながら、舟生・鈴木・大山と改良を重ねて育てられた回腸新膀胱が、今岐阜で更に大きく華咲こうとしています。同門の1人としてこんな嬉しいことはありません。

先生のご講演を聴きながらこんな事を考えていました。

岐阜大学・愛知医科大学スクラム構想です。

住友愛知医大教授はこの東海4県ではダヴィンチ手術ではトップの方です。住友・古家両教授がタッグを組み、教室がスクラムを組んで交流を重ねて研鑽を重ね、RARC+ICUDを増やしましょう。5年間で200例を目標にしてみました。難しいことは分かりません。何も知りませんが、尿路変更術が必要だと宣告された患者さんにとって新しい、素晴らしい提案です。そう思うと、200人は少ない数字かもしれませんね。日本中の患者さんの新しい選択肢を岐阜・愛知から「発したい」と思います。大変だった時代を知るウロの医者の1人として、セツにそう思います。

私は弘前大学泌尿器科出身で尚且つ、愛知医大泌尿器科教室(瀬川昭夫初代教授時代)にも8年ほどお世話になっていたので挨拶の順番が回ってきただけです。詳しい知識も何もありません。

5年間に200人という数字に根拠は全くありません。

岐阜大学1年に30例、愛知医大1年に10例 合計40例。5年で200例。

単純な掛け算と足し算です。

どんな術式なのだと興味にある方は

インターネットの「 エキスパートの技術と思いを学ぶ」https://www.misewaza.jp/uc/

を開いて下さい。

その中の「 泌尿器科癌CH 」をクリックして

「ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術とU字回腸新膀胱造設術」

    弘前大学泌尿器科教室主任教授就任 大山力

を観て下さい。

                         平成30年09月30日

                                  脱稿

 

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