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最先端医療技術見聞録-その4(瘤取りじいさん、もといシミ取りじいさん物語り)

形成外科の扉を叩く・・たのもう!

  私は顔の「しみ(老人性色素斑)」と「老人性角化症(日光角化症)」の除去手術を平成26年11月に木澤病院形成外科の高木美香子先生に手術をして頂きました。65歳の時である。「しみ」治療は勿論保険診療外ですから、自費診療です。

70歳近い男が何の目的で、どんな心つもりで治療を受けたのかの説明から始めます。

最初に断っておきますが、色ボケ老人が、色狂いをして治療を受けたのではありません。

まず最初に治療を受ける前の私の顔写真を観て下さい。

「シミ」と「老人性角化症」の標本みたいな顔です。

毎朝恒例の「診察前の鏡睨めっこ」をしながら、いつもこう思っていた。「汚い顔」「生まれつきの醜男は致し方ないが、後天的なこの汚れは気にいらないなぁ」屋外でよく活動したという証であり、年輪だとは理解していたが、嫌いだと嘆き・呟いていた。

美容整形外科でレーザー治療があることは数年前から知っていた。が、門を叩く勇気も持ちあわせていなかった。「どうしたの!」「何をその年で血迷ったの!」というあざけ笑う声の思いが脚を重くした。転換期は今年の加茂医師会の新年会である。偶然に形成外科の高木美香子先生と同じテーブル・グループになった。恥ずかしさに赤面している自分を意識しつつも、ビールの力も借りて高木先生に顔(病的範囲)を近づけて聴きました。答えは明快でした。今の時期にやって下さい。これ以上に進行すると色々障害も出てきます。治療後の痛みがひどいです。治癒するまでに時間も掛かります。術前と術後の顔の変化が余りに大きいので家族・職員さん、そして患者さんもビックリします。今の状態であれば、「?」と思っても直ぐに慣れます。私は大きく頷きました。直ぐにでもやるつもりでした。ところが、ランニング日焼けと共に目立たなくなってきました。だんだん、臆病(億劫)になってしまいました。ところが色が褪め始めると目立ち始めました。この辺りの心境は完全な自意識過剰です。夏が終わり秋も深まる11月には決心しました。目立たないうちに治療を受け、その後も定期的治療を継続すればいいのだ。そう決心して木澤病院の形成外科に予約を入れたのが11月16日

註 1

自動車の運転の作業前点検みたいなものである。

自分の顔は自分が一番分からない。分からないというより知らない。「目やに」が残っていたり、調髪が乱れていたり(いがぐり頭なので関係ないが)、髭の剃り残しあるままでは、失礼であろう。口臭も然りである。相手に不機嫌な思いをさせては申し訳ない。開業医として失格である。

敢えて言えば、リンカーン大統領の、男は40歳を越えたら自分の顔に責任を持つべきだという主張を「うん!むべなるかな」と目標にしてきた一人の男としてチョット恥ずかしい顔貌だった。

 

11月29日(土曜日) 午後3時

  3時少し過ぎに表面麻酔薬を塗って貰いました。キシロカインは皮膚表面麻酔効果は無いはず。じゃ何だったの?この原稿を書きながら調べてみました。きっとエムラ・クリーム(リドカインとプロピトカインの合剤)ですね。ペンレス・テープよりは使い勝手がよく、効果も良好のようです。

 「シミ」と「老人性角化症」はCO2レーザーで病巣を削り取るという治療法でした。術前の診察室に入ってビックリです。研修生・見学者で一杯です。形成外科の人気の程がよく分かりました。土曜日の午後4時ですよ。

そして、始まりました。予想外にアグレッシブな治療です。麻酔をしたはずですが、結構「チク・チク」とする痛みがあり、顔全体が焼けるような感じがあります。耐えられない訳ではありませんが、男とは痛みに弱い。治療時間は10分程度だったが、結構長く感じられた。「終わりましたよ。佐藤先生」の声に顔を起こして鏡に映った己の顔を見ました。顔中赤く腫れ上がり蜂の巣状態です。テープを貼って貰って終わりです。ヒリヒリしています。上皮化に7から10日間かかります。その間ディオアクティブを張るように指示をされる。

 シミのレーザー治療では皮膚表面を蒸散するCO2レーザーと、メラニン色素を選択的に破壊するQスイッチ・ルビーレーザーを状態によって使い分けるまたは併用することで、シミを薄くします。ダウンタイム(日常生活に支障をきたす期間のこと)が大きい代わりに効果も大きいのがQスイッチ・ルビーレーザー、一方ダウンタイムがほとんどない代わりに効果が若干劣るのがフォトRF治療です。

 

註 2

 レーザー治療

 Ligtt   Amplification   by the Stimulated   Emission     of   Radiation

     光    増幅         誘導    放出      放射線

  放射電磁波の誘導放出による光の増幅

 それ以上詳しいことを求めないで下さい。これは単なる私の私用の読み物に過ぎません。

 

術後経過

 看護婦の「トシコちゃん」を呼び出してディオアクティブに張り直して貰う。 「顔にディオアクティブを貼ってくれ」と電話したので、 ランニング中に転倒して顔に怪我をしたのだと勘違いして 飛んで来てくれました。目と口以外がテープで覆われている顔を見て「どうしたのですか?」と聞くのでこう答えました。「太古の昔から男の火遊びは女!ときまっている。」

「えっ!やけどしたのですかぁ?」

「何処で?」

私の迷解答も受け入れられないので「木澤病院の形成外科で・・・」と説明しました。

彼女は私の説明を聞いて、呆れかえり、ただただ 笑いこけられてしまいました。

夕食前には、痛みも随分と和らぎ楽になりました。顔は腫れぼったく重い感じがありました。ビニール袋に氷を入れて冷やし始める。アイシングをすると気持ちがよい。

翌30日(日曜日)

加茂医師会の「休日診療当番医」でした。坂祝や白川の患者さんはわざわざ八百津までは来ません。朝の9時から夕方5時まで開院していて患者さんは数名だけでした。ダウンタイム状態に近いこの顔を余り多くの人には見せられない。そう思っていたので患者さんが少ないのは大いに助かりました。組織滲出液が沢山洩れてきます。ガーゼでは拭き切れないのでタオルで拭く。痛みは全くない。

12月01日(月曜日)

滲出液も殆ど漏れてこない。でも剥がした顔の状態は真にお岩さんの如しである。

ディオアクティブを貼ってひたすら隠す。午後には滲出液殆ど無くなる。他人の惨状はあっという間に伝わるものだ。夕方、診療前に親しいMRさんが2人程見舞いに来る。私のディオアクティブ仮面状態に驚き、その理由を聞いて笑いを押し堪えている。「大切にして下さい」「早くよくなるといいですね。」と常套句を言い、面白いものを観たとばかりに早々に帰る。

入浴前に剥がそうと思ったが滲出液は殆ど無い。そのままの状態で寝る。

2日(火曜日)

色々迷ったが、診察前にディオアクティブを剥がし、マスクをしてチョット深めの縁なし帽をかぶって診察室に出る。赤みも殆ど無い。炎症所見もないね。

夜間診療時にはマスクも帽子もしませんでした。就寝時に乾燥を防ぐためにワセリンを塗布する。

03日(水)

ルーティンの生活に戻る。軽度の発赤と皮下出血は認めるものの上出来である。仕上がりが楽しみである。

                       ********

外来の患者さんは、誰も気がついてくれません(気がついても余りにソウマシイ顔に言葉を失ったかもしれません。そしてヒソ・ヒソと想像を楽しんだ人は有るかもしれない)が、だからこそやり甲斐があったのです。術後のど派手の状態を知っている人だけが綺麗になりましたね。と、褒めそやしてくれます。つまり、職員と女房です。

                       *********

21日

形成外科の再受診をする。◎を貰いました。私も◎をつけました。

 

術後談話

医者仲間、親しい友人に術前・術直後・術後の写真を送りました。

一様に驚き、その常道を逸した行動に呆れかえっていました。その中でも私の心に深い感動を、印象を残したメールを無断でコピー・ペーストしておきます。

X氏からの手紙

老醜をさらけ出す、その大勇気に感服いたします。 10円氏だけでは、もちろん有りません。私も含め 老人のUPの顔面がこれほどまでに、汚いものだとは自覚できずに>いました。御自慢のカメラの性能も良いのでしょうか!醜いね。汚いね。

夕方5時頃> その写真を見てから、夜、久しぶりにミケちゃんとのデートに いそいそと出かけました。間近で見る24歳の娘の顔肌のなんと 艶やかで美しい事か。彼女から見ると、自分の顔は、さっき見た さる老人の肌と一緒に見えているのかと思うと、偉そうに彼女を 口説く勇気も失せ果てました。案の定、その夜はその小娘にさんざんに言われました。

X氏「八戸の開業医では誰がかっこいい> と思うかね?」・・・

ミケ「若い先生は皆さん、まあまあですよね」

X氏「・・・」

ミケ「ははは、もちろん先生も人気ありますよ。話すと面白いって、ははは」

X氏「質問を変えよう。彼氏が出来たらしいがほんとか?」・・・

ミケ「えーまあそうですけど、彼氏は前からいますよ。それでこの頃誘ってくれないんですか?」

X氏(ややドギマギして)「そんな事は無いよ、お前に彼氏がいない方が不思議だろう。忙しいんじゃ」

ミケ「そうですかぁ、病院暇そうですよね。何してたんですかぁ?」

X氏「そりゃ、研究会とか学会とかあるだろが・・・」

ミケ「こないだの昼は研究会と言いながら、喫茶店の前に車有りましたよ」

X氏「その喫茶店であったのだ」

ミケ「苦しそう」

寿司屋でそんな話をして、さあこれからスナックでも言って歌いながら・・・、と

作戦を立てたのですが、じゃあ明日早いのでこれで失礼します、言って逃げられた のでした。

老いは醜い・・・まあそれでアンチエイジングなんでしょうが。

大先生のようにささやかな抵抗をするか、

いっそ開き直って、もっともっと日焼けして皮膚がんにでもなるか、

何かやけくそですね。(昨日から悲観的な私)

註  3

彼(X氏)の名誉のために私は真実(事実ではないかもしれない)を語ります。

私(takasan310)からのメールと添付の写真を見て思わず吹き出してしまう。何を血迷った。還暦を過ぎ、古稀を迎えんとする男に恥も外聞分もないのか。「UGLY」と言う単語がピッタリの顔貌で今更何を望もうというのだ。

鮨屋ですしをつまみ、ビールを飲みながら、半分呆れ、半分訝しがりながらミケに写真を見せ私(takasan310)のことを酒の肴にする。こき下ろしながらも己(X氏)との対比で面白おかしく評価を高めた。彼女との軽妙な会話を楽しみつつも、意識的に挑発的な発言と繰り返し心を誘った。そしてその夜、若い女性の薫り立つが如くの豊饒の肌を充分にむさぼりほいしいままにした。愚かで浅はかな私の(takasan310)の行動をニガニガしく感じながらも、妙にいつも以上に奮い立つものを感じる夜だった。

私のややエクセントリックな行動に「分からんでもないが、ベラスツングが溜まっているのかなぁ?」「それともあいつ(takasan310)一流のパフォーマンスか?」「老いを迎えるということは悲しいことや、しかし抗うことは出来ない。受容あるのみだよ」「あいつは非日常性に糧を求めすぎだよ」「昔からチョット行動が常道を逸するところがあるのだから、まあ許容範囲かな!」でも余り刺激しないでおこう。チョット的外れな自虐的なエピソードに仕立て直して、私の興奮を和らげておこう。

takasan310からの返事

人生は近くで見れば「悲劇」です。遠くで見れば「喜劇」ですよ。

才能の有る人というのは君のことを言うのだろうね。畏れ入っています。素晴らしいお褒めの言葉を頂きました。己の、いじましく、健気な努力、或いは形成外科のドアーを叩く恥知らずの破廉恥野郎を讃えて頂き、その愚かな行動に価値を見いだして頂きました。

感謝に堪えません。

さらりとかわして心髄をつく

これぞまさしく天賦の才ですね。

有り難う。

多謝・多謝です。

ミケちゃんとも絶好調のようで何よりです。

いつも思うことだが君の独特のフェロモンが羨ましい。「けなるい」ですね。

イソップ物語ではありませんので、無い物ねだりはしませんがね。

 

註  4

2年前ホームページを立ち上げた。そして、思いつくままを勝手気ままに投稿することを始めた。それならばとペンネームをタカサン(takasan310)と命名した。がそれ以前は、弘前大学山岳部入部時からジューエン(¥10)と呼ばれていました。 その由来は、目玉が10円玉ぐらい大きき、しかも鳶色なので10円玉そっくりだということから呼称され始めました。

けなるいは、岐阜弁で、相手を、相手の持っているものを羨ましがる、欲しがるという意味

蛇足の蛇足

takkasan310の310はサトーです。分かっていますよね。

 

3年半後の感想

日頃は全く意識をしていない。同年齢で「シミ」の目立つ人、老人性角化症(脂漏性角化症)でボコボコしている男性に治療を進める程度です。

が、改めて2014年の術前の写真を見てみました。食い入るように見つめました。

「やっておいてよかった」実感です。

高木先生有り難うございました。御礼の言葉が最後になってしまいました

 

                            平成30年6月16日     脱稿 

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