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  日の名残り ノーベル文学賞受賞「カズオ・イシグロ」の代表作(2017年12月追記)

日の名残り

          アンソニーホプキンスとエマ・トンプソン

 ノーベル賞授賞式で、スウェーデンのカール16世グスタフ国王(手前)から文学賞のメダルと賞状を受け取るカズオ・イシグロ氏=10日、ストックホルム(共同)

重くてずしりと来る映画ですね。拍手もない。こみ上げてくる感動もない。それでありながらこんな生き方もあるのだ。こんな運命のイタズラもあるのだと・・・。

ストイックに生きた男の悲哀物語り

第二次大戦後が舞台です。

手紙の朗読から始まる。・・・ケイトン婦人からスティーブンスに宛てた手紙

ダーリントン卿が亡くなり屋敷が、ホテルが売りに出された。アメリカの富豪、ルイス議員が購入した。石材になることは免れた。(このルイスはかってダーリントン卿の方針に大反対した人物である。アマチアであると・・)

自分の近況の報告をする。夫とは破局を迎えている。一人娘のキャサリンは嫁いだ。

その手紙を読んだ、スティーブンソン(ホプキンス)は、遂に決心する。心に思い描いていた夢の実現に向けて・・・。彼はホテルの執事として、かってのスタッフを再雇用しようと英国西部の旅行に出る。主人からはダイムラーの使用を許される。

回想

ルイス議員(新しい主人)との会話から回想が始まる。

第二次世界大戦の前、ドイツが再び軍備を持ち始め、台頭し始めた時代である。ダーリントン卿はドイツびいきである。

狐刈り、沢山の猟犬・・・壮大ですね。如何にもイギリス貴族です。自分の父とミスケイトンを雇用する。四角四面を通し、格式とこれまでのしきたりを墨守するスティーブンソン。 早速、父に対する呼び名で、ケイトンと対峙する。・・・CHRISTIAN NAMEで呼ぶのは身分の低いものに対する呼び方であるというのが彼女の言い分である。が、彼女がおれて父親をスティーブンスン・シニアと呼び始める。気むずかしい執事である。

部屋に花を持ってきてくれるケイトンに対してもつれない。「心を乱さないでくれ」と・・。彼女は、物静かでありながら仕事にあくまでも忠実なスティーブンスに思いを寄せる。

使用人の食堂に於ける一コマ・・・父親が語るエピソード・虎が寝そべっていた。??

屋敷で2週間後に世界の要人が集まって会議をする。その準備に取りかかる。

ダーリントン卿はドイツを繁栄させることが欧州の平和に繋がるという主義者である。

その頃ナチスも台頭していた。ドイツ擁護派とドイツ抑制派の対立・・。

紅茶を運んでいて石につまずきケガをする父親・・・。ケイトンは父親を心配する。遂に彼は父屋に、54年間食卓で仕えてきた父親に宣告する。控えてくださいと・・。それを受け入れる父親・・・。

米国からのお客様の到着・・・ルイス議員である。一日早い。

フランスからも足のまめを作ってしまいご機嫌ナナメ・・・・因幡の白ウサギ的治療をする。・・デュポン・デイブリー

そして、父親が倒れる。ケイトンに看護を頼む。・・・最期も彼女が看取る。

会議は、ドイツが強力な国家に立ち直る権利を認めることが平和に繋がる。

ドイツ代表の婦人は涙ぐむ思いで聞く。が、ルイス議員は反論する。それが大きなリスクです。と反対の立場を表明する。現実を踏まえた政策が必要なのです。あなた方は政治のアマチアです。プロに任せるべきです。

ダーリントン卿は反論する。アマチュアの精神を我々は名誉と呼びます。プロとは権謀術策の塊だ。正義と善を軽視する連中だ。

現実

SEA VIEW HOTELでお待ちしますとの返事貰い、旅に出る。

回顧

2人のドイツ人の女中を解雇する(ユダヤ人)・・送り返され消息不明。

この解雇の話には、ケイトンが大反対する。私もやめる・・・。

得がたい人だ。この屋敷に必要な人材だと慰留する。

現実

車がガス欠になり村に立ち寄り、居酒屋で口論になる。戦後の世の中はではダーリントン卿は売国奴的扱いであることを知らされる。

私自身も大きな過ちを犯しました。それを問い質すのが今回の旅なのだ。

回顧

リジー・・・新しく雇ったかわいいMAIDさん。顔を見ようとしないスティーブンソンをケイトンにからかわれる。

かわいい娘なので心もそぞろである。だからかわいい娘さんは雇わないのだ。気が散るから敬遠するのね。

そのからかいに「下らない話に耳を貸したくありません。」

花を摘んで部屋に運んできてくれたケイトンに本を読んでいるところを見つかる・・。

みつけて・・みせて!!

エロ本ではなくて、感傷的な恋愛小説だった。・・「一人にしてください」と答える彼!!

リジーとチャーリーが結婚する・・・辞職する。

ケイトンはトム(他の屋敷の執事)に相談する。・・・いわゆる英国のパブで会う。

彼はクリーフトンに帰る。一緒の帰ろうと誘われる。

2130分の門限までに帰ろうとするが、トムに誘われ、抱擁を交わし、接吻をする。

幾度かの逢瀬の後、彼女はトムに求婚されたことを報告する。

彼は、如何にも事務的に処理する。嗚咽の漏れる彼女の部屋を訪れても慰めも言わない。新しいメイドの掃除の不備を指摘する始末だ。これで彼女は決心する。

 

3年後、ドイツ大使を招いての会議である。

ダーリントン卿+首相+外相+ドイツ大使

現実

ガソリンを詰め、SEA SIDE HOTELに向かう・・・海に突き出たホテルだ。

そこで彼女の到着を待つ。

一方、彼女が出掛けようとしたその時、別れた夫が現れる。キャサリンに子供が出来た。君が必要だ。キャサリンもそう言っている。

兎に角、ホテルに駆け付けるケイトン

私の結婚はあなたを困らせたいという気持ちだった。結婚した自分にビックリした。

雨の降りしきるバス停で彼女を送る。最後に握手をする。

雨が上手に使われていました。

どうか御達者で!!  もうお目に掛かることはないと思います

それに対して

不躾なことを申しました。

 

切ないね・・余りに切ないね。

男かもしれないが、・・・・素晴らしいスティーブンスンでした。

 

                      2010/11/28

                                            2013/03/05

以下は私の文章ではありません。

アンソニー・ホプキンスの名作のひとつです。

個人的には、ハンニバル・レクターに並ぶ秀逸な演技だと思います。

在りし日の英国の紳士としての作法・言葉・振舞いが随所に光ります。

何度見ても心地がいい。

「恋愛映画」とはいえない『荘厳な人間劇』と呼ぶに相応しいと、個人的には思っています。割と日本では知名度の高くない作品のようですが、人生の長い時間の中で誰もが経験し得る、自分では気付かない

”転機””切なさ””黄昏”を見事に表現した作品です。

 

平成29年10月5日  追記

原作者は2017年のノーベル文学賞を受賞した日系の英国人(両親は日本人で長崎で生まれ5歳まで育った。英国籍を取得したので日本国籍を放棄。)カズオ・イシグロ氏である。日本人のノーベル文学賞は川端康成、大江健三郎についで3人目である。

大好きな村上春樹が今年も受賞を逃したのは残念。残念というよりも選考委員の偏向思想を疑うほどだが、彼の受賞を心からお祝いしたい。

「日の名残り」は素晴らしい映画である。年月を経て見直すと主人公・スティーブスンの心に移行しやすくなれる。最初に観た頃はこのキザ野郎とか、自分の心に素直になれと反発も感じた。今回の受賞を機に鑑賞後の記録を読み直してみると、「そうだね」と頷くことが多い。                                               

  2017年10月5日  (受賞のニュースを聞いて鑑賞文を探し出し推敲なしで投稿)

6日、朝のNHKニュースのインタビューで彼は「もののあわれ」という日本人だけが感じる感性、美意識を強調していました。「日常性に潜む悲しみ 慈しみ」でしょうか。そう思うと最後のスティーブンソンの一言も胸に一層沁みますね。

今回の受賞にはアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンのこの素晴らしい俳優さん達の名演技が大きく後押しをしたかもしれないね。

本も映画も観たことのない方々には映画鑑賞からお勧めします。

 私も本は読んでいません。早速注文します。

追記

写真

イシグロ氏 ノーベル賞、記念講演

 

講演題名 「 私の20世紀の夕べ-そして幾つかの発見」

        ストックホルムのスウェーデン・アカデミーで講演

 

 今年のノーベル文学賞を受賞する英国人作家カズオ・イシグロ氏(63)が日本時間8日未明、記念講演を行った。

この危険な分断の時代の中で、自国の利益ばかり優先し、極右が台頭する分断の時代だからこそ、文学を通じて多様な声に私達は耳を傾けなければいけません。よい作品を書き、詠むことで壁は打ち壊されていくのですと述べ、閉塞感に覆われた世界で文学者が担う使命の重要性を説いた。

 

 イシグロ氏は日本人の両親の間に長崎市に生まれ、5歳の時に渡英。講演では自らの生い立ちや、記憶の中で薄れゆく日本と向き合ったのが創作活動の原点であり、生まれ育った長崎の第二次世界大戦後の日々の紹介、そして小説の中で「私にとっての日本」を築き直そうとの思いだったと述べた。その小説が処女作「遠い山なみの光」である。

常に自分の一部は日本人であると語り、「日本人であることを誇りに思う」といつも話す。

日本で自分の受賞が歓迎されたことを「感動した」とコメント。

 来年のこの時期には村上春樹のノーベル賞授賞式の講演雑感を書きたい。

              トレード・マークのジーンズでストックホルムに行き講演して欲しい。

                         平成29年12月8日  脱稿

 

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