佐藤クリニックロゴマーク

ウクライナ断章 5月 その4  対独戦勝記念日のプーチン大統領演説から

対独戦勝記念日のプーチン大統領の演説から思うこと
 演説の骨子
 「ウクライナ」への宣戦布告はしませんでした。ロシアの特別軍事作戦の正当性を力説。昨年の12月にNATOに対して協議(東方拡大停止)を申し入れたが受け入れられなかった。NATOがウクライナに最新兵器を供給して危険が迫った。ロシアを守るためにはこの道しかなかった。やむを得なかった。唯一の正しい選択だった。核兵器については言及なし。「イリューシン80」も飛行しなかった。
 現在の底なし沼的状況を創り出した3つの大きな要因は
その1
ロシアの展望の甘さ
 天下のロシアである。怒れるシロクマだと思っていた。我々ロシア人が、無知蒙昧な世界の人々を邪悪な民主自由主義から解放するのだという思い上がりの選民思想の塊である事は間違いない。ハンガリー動乱、プラハの春、アフガニスタン侵略等を観れば歴然である。ベルリンの壁が崩れた東ドイツの混乱時だけは、ロシア軍の象徴「タンク」が動かなかった。(何故かといえば、NATOの東方拡大に関して、NATOとソ連の間に約束があったはずだ。それを守らないのがNATOだというのがソ連(ロシア)の言い分です。)
そんなロシアですが、庇護者のロシアの言い分を聞き入れない不祥のウクライナではあるが、そんなに簡単に占領出来るとは思っていなかった。

ところが、今年の1月にこんな事があった。ロシアの衛星国であり、友好国であるカザフスタンで大規模な反政府デモが勃発した。
カザフスタンのトカエフ大統領は、集団安全保障条約(CSTO)に対して、「自国内の暴動、氾濫を収めて欲しい」と要請した。その要請を受けて、ロシア兵を中心に、2.000名ほどの軍隊が派遣され、反乱は即座に鎮圧された。実にあっけなかった。これで味をしめた。プーチンとその側近達は自信過剰になったのだ。この軍事力ならば、今や目の上のたんこぶと言うよりも、一番の邪魔者であるウクライナを占領することは可能である。傀儡政権を樹立して、「非武装・中立」として擁立する。NATOとの格好の緩衝国になるだろう。欧州はおろか、世界中にロシア国家の偉大さを知らしめる絶好の機会になる。そう確信した。
そう確信し、即刻行動に移せばチャンスもあったが、ひょっとしたらデモンストレーションだけでも交渉成立するのではないかと己の兵力に自惚れた。チョット時期がずれた。

その2
ウクライナ国民の勇敢さ この国の国歌を聴いたならば、容易ならざる国である事は一目瞭然である。
 

                         ウクライナ国歌  ウクライナは滅びない

ウクライナは未だ滅びず
その栄光も自由も
同胞よ 運命は
我らに再び微笑むだろう
我らの敵は
太陽の下の露の如く消え
我らは国を治めよう
我らの地で
魂と身体を捧げよう
我らの自由のために
そして示そう
我らがコサックの子孫である事を

同胞よ戦場であろうとも

我らは立とうサン川からドン川まで

我らは認めぬ
他者による支配を

                                                    (無断掲載)

少なくとも日本の国歌「君が代」にはこめられてない思想がこの国歌にはある。
 2014年のロシアによるクリミア半島の略奪(ロシアに言わせれば正当なる返還)から、イヤ恐らくソビエト連邦社会主義共和国が崩壊してウクライナが独立(1991年8月)して以来、1日も休むことなく、絶えることなく祖国防衛の備えをしてきた。それは、「万が一」ではない確率でロシアが侵攻してくると言う現実の恐怖と戦ってきている。そして、2014年のクリミア略奪以降は、国家一丸となって戦う準備を進めてきていた。徴兵制の軍隊を持ち、国民皆兵の志を植え付けてきている。今回でもロシア侵攻に対して早々と20歳以上の男子の国外退去を禁ずる戒厳令を発布している。蒙古襲来以来外国勢力に蹂躙され続けてきた国だけに徹底している。

そして、私が現時点で思案するにこの国の犯した唯一の誤りは核兵器の除去・放棄である。
    ブタペスト覚え書き
1994年 ウクライナが核兵器を放棄する代わりにロシア、米国、英国がウクライナの主権を保障する内容の「ブダペスト覚書」が、交わされた。勿論、ウクライナが製造した兵器ではない、ソ連の核兵器である。それが配備されていたのだ。そのまま保持していれば良かったのだ。


その  3  欧米の軍事援助
が、現在の状況を創り出しているが、
 ロシアにとっては生き残りが掛かっている戦いである。ただ、それは欧米にとっても同じである。もし、敗れたら今後もプーチンの脅威に怯え続けなければいけない。冷戦後の国際秩序がロシアの国益に叶わなかった。変更の必要がある。とロシアの指導者は頑なに信じている。中国は得をした。そんな被害者妄想がある。
そして
厄介なことにロシア人は選民思想を抱いている。神の代理人のご加護と指導の下に世界の人々を正しい道に

スターリン時代の悪弊から脱却出来ていない。ソ連時代の反省がないことが一番問題である。

このまま長期戦になるだろうが、欧米の経済制裁、そして軍事援助などから5年ぐらいでプーチン政権は倒れるだろう。
一番の課題はその次に出来てくるロシア政権の正確である。
時間をかければ、教育すればロシアに民主主義は根付く。私の希望である。無法地帯の巨大国家にしておく訳には行かない。

                                                  令和 4年 5月21日 脱稿

電話・FAX

TEL.0574-43-1200
FAX.0574-43-9050