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国際都市香港を想う(2014年 雨傘運動)

香港を想う  雨傘運動を省みる

 

「パンドラの匣」を開けると「希望」が残っている

2014年

9月28日

79日間続いた民主化要求デモが始まる。2017年の香港行政長官選挙をめぐって、中国中央政府が民主派の立候補者を実質的に排除する選挙方法を決定したことに抗議する数万人の学生・市民が銅鑼湾(コーズウェイベイ)・金鐘(アドミラルティ)・旺角(モンコック)などの繁華街を占拠した。雨傘運動の名称は、催涙弾や催涙スプレーで排除しようとする警察に、デモ参加者が雨傘をさして対抗したことからつけられた。

9月27日

民主化を推し進める、20歳以下の笠の世代といわれる学生が一斉に蜂起した。綿密に計画を練り、極秘裏に、そして、香港の命綱、銀行街を占拠した。この報道に接した時胸が熱くなるのを意識した。天安門事件を直接は知らない世代が中国政府に、傀儡の香港政府に「ノー」を叩きつけた。スカラリズムと香港学生連盟はともに、インターネットを通じてメッセージを拡散してきた。2年前、「スカラリズム(Scholarism)」と自称する中等学校の活動家らの助けを借り、香港の学校で中国本土寄りの国民教育を導入する計画を棚上げさせることに成功した。香港には新しい、熱い波がある。

今度の要求も中国政府が認める訳はなく、徹底的に弾圧するに決まっているが、天安門と同じ事は出来ない。そこが彼等のジレンマだ。

10月01日

中国は国慶節で長い休暇に入る。観光は大打撃である。香港民主派デモ隊の「天安門の再現」恐れる政府ではあるが、かと言って民主派に譲歩すれば、国家転覆を怖れなければならない。それは言い過ぎにしても共産党独裁政治を金科玉条とする現中国政権にとって譲歩という文字はない。11月には、APECを開催予定である。世界中が、固唾を呑んで見守っている。少なくとも国内問題だと言い張っても世界が納得しない。

占拠を続ける学生達も疲れが焦りが目立ち始めている。2日までに長官の辞任を要求している。「一国二制度」の大きな試練である。普通選挙を行うが、立候補者は中国政府の息の掛かったものに限る。・・台湾も成り行きを見守っている。歯ぎしりをしていると思います。この雨傘革命に!!

しかし、自分達の意思を表現するエネルギーを持つ中国人はまだまだ活力に溢れている。

10月5日

睨み合ったままです。中国政府も動けない。世界中が凝視している。アメリカはイスラム国(IS)の中東で大チョンボをした、ロシアはウクライナの親ロ派への肩入れ、マレーシア航空機の撃墜などで大きく国際信用を落とした。中国はあまりに香港がオープンであるだけに動けない。

10月14日

中国政府は学生運動のデモ隊の要求は受け入れないと厳命する。

10月16日

睨み合いは続いている。人民軍は投入しないと公言したという事は介入させると言う事でも有る。

学生側もなかなかである。頑張っている。市民の応援もあるだろうね。

11月25日

警察による強制排除が始まる。学生側もバリケード撤去やむなしの結論である。不測の事態だけは防がなければいけない。

12月2日

徐々に追い詰められた学生側は、首謀者が自首しているが、抵抗を続ける学生の力も根強いものが有る。中国政府はここまで来れば強制排除だ。英国が介在しようとしているが、中国は聞く耳を持たない。

 

12月15日

香港警察は行政長官選挙の民主化を求めて占拠を続けてきたデモ隊を強制排除した。国際金融センター香港の中心部で9月末に始まった道路占拠は、79日目に完全に終結した今回の強制排除で多くの逮捕者を出した。また梁行政長官は15日、警察が最後のデモ拠点を強制排除したことを受け、11週間余り道路が占拠された民主化要求デモが終わったと宣言した

 

野次馬佐藤の印象

何故だが急速に学生デモ隊の力が分散化し、削がれてしまった。最後には、警察の国家権力のなすがままに逮捕され、解散させられた。香港の民主化要求運動には期待していた。何故なら、返還協定移行の政治の方向性にもの申しただけだ。英国統治の時代に戻りたい。急速な中国化には抵抗がある。そんな要求に過ぎない。中国政府も「一国二制度」を十分に理解しているはずだ。そのメリットを充分に享受してきている。これからも享受し続けたい。

21世紀には多くの革命が起こった。2004年には、東欧のウクライナで選挙結果の不正操作を火種に民衆が蜂起し政変が起こった。オレンジ革命と呼ばれている。その後、親露派と親EU派に国内が分断され対立が深まった。その隙を狙って2014年にはロシアがウクライナ共和国のクリミア自治共和国を併合した。

2010年にはアフリカのチュニジアを発端として連鎖的に中東に革命が起こった。所謂「中東の春」である。全例のない大規模なデモを主とした騒乱状態となった。ジャスミン革命と呼称されている。勃興したチュニジアでは2010年12月に政権を打倒し、その後民主主義国家に移行しつつある。飛び火したエジプトでは、ムバラク大統領が政権から引きずり下ろされた。一時的に民主化が進んだが、対立が深まり、軍事クーデターが起こり民主化の芽は摘まれてしまっている。

2011年にはイエメンでも政権打倒の大規模なデモが行われ、長期腐敗政権が倒された。民主化の指導的立場を担ったカルマンさん(女性)が、ノーベル平和賞を受賞した。今は宗教派閥の対立が続く戦闘地域になっている。世界最悪の人道危機」がイエメン内戦の実情である。

シリアでもアサド大統領の独裁に反対するデモと武力蜂起が起こり、世界各国が入り乱れての内戦状態である。その隙に乗じてシーア派の武力組織がイスラム共和国「IS」が台頭しイランとシリアの国境に新しい国を樹立させた。

 これらの苦い経験を基に香港人は上手に中国政府と交渉するだろう。渡り合って権利と実績を入手するだろう。そう確信していた。それだけに急速な尻すぼみにはチョット驚き失望していた。

けっして、政府転覆を目指すとか、独立をしたいなどと言う野望ではないはずだ。理性と理性の交渉で香港は生き延びると想っている。

                       2019年09月6日  脱稿

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